熾烈!両備バスvs「めぐりん」

「めぐりん」とは平成24年から運行開始された、岡山市内中心部を循環する路線バスの愛称です。

主にJR岡山駅・岡山シンフォニーホール・天満屋岡山店・岡山県庁・岡山大学病院・岡山市役所・イオンモール岡山・JR大元駅・岡山赤十字病院など市内中心部に特化した循環型のバスです。

 

料金は岡山駅~岡山大学病院コースが100円、その外回りで大元駅・下中野方面コースが200円と割安な運賃となっています。

この「めぐりん」の新規路線を巡って2018年現在、岡山では様々な問題が噴出しています。

それは老舗運輸会社と新興の運輸会社との対決姿勢から行政、さらには市民を巻き込んだ一大事の様相を呈してきています。
ここまでの経緯を時系列的にまとめてみたいと思います。

「めぐりん」西大寺方面に進出

そもそも岡山市内を中心とする岡山県南部は両備グループが多くバスを運行していました。

市内中心部を子会社の岡山電気軌道(通称:岡電)が運営し、市内東部から南部のやや郊外部を両備バスが担当するという棲み分けがなされてきていたのです。

今回問題になっている西大寺方面も岡山中心部から東にある西大寺へ向かう路線バスで両備バスの担当区域です。
市民も何の疑いもなく通勤・通学の足として両備バスを利用してきました。

ちなみに「両備」とは戦前の発足期に遡り、西大寺鉄道と下津井電鉄の共同出資により誕生したバス会社に「備前の西大寺鉄道」「備中の下津井電鉄」の両方の「備」をとり「両備」としたことに由来します。

さてこのほぼ独占状態であった両備の牙城に新規路線参入を表明したのが八晃運輸㈱が運営する「めぐりん」だったのです。

申請を受けた中国運輸局がこれを認可したのが2018年2月8日のことでした。
この認可を受けてただちに両備グループは行動を起こしました。

両備グループ市民の足を人質に抵抗

中国運輸局の認可が下りたのが2月8日、同日両備グループは31の赤字路線の廃止届を中国運輸局に提出しました。

理由は、黒字路線であり同グループの稼ぎ頭でもある西大寺線に新規参入事業者を認めるということは同社の赤字路線が維持できなくなることを意味するというものであり、維持できないのであれば当社としては31の赤字路線を廃止せざるを得なくなりますよ、というものでした。

つまり、これまでは赤字路線の補てんを黒字路線でしていたのにお役所はその黒字路線に競合他社の参入を認めて、ウチの経営を圧迫しようとしているのですか?それならウチは赤字路線の運行を辞めちゃいますよ、それでもいいんですか?とある種脅しをかけた格好ですね。

この31路線の廃止届の提出が唐突だったものですから、慌てたのが岡山県、岡山市の行政機関、そしてもちろん問題の31の赤字路線沿線に住む住民たちでした。

「いきなりそんなことを言われても・・・」
「西大寺方面の人はええじゃろう。めぐりんに乗りゃー安いんじゃけー。でもわしらはどうなるんな~。足がのうなるんで。」
「バスが動かんようなったら通勤や通学はどうすりゃーええんじゃ」
「このまま市民生活に混乱を来すようになったら行政への風当たりが強くなる。」
「次の選挙はどうなるんだ・・・」
等、各所各人様々な思いが駆け巡ったようです。
一部筆者の憶測もあります。ご容赦願います。

岡山弁が気になった方は
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国土交通省、岡山県、関係市の動き

この状況の中、ついに国が動き出しました。
2月13日、石井国土交通大臣は両備ホールディングスが提出した31の赤字路線の廃止届を受け、路線維持に向けて協力していく考えを示しました。

具体的には「全国の事例を踏まえた助言や、各種支援策の活用などで協力したい」と述べました。

人口が集中する都会ならともかく、地方都市では限られたパイを食い合う構図でバス事業が展開されており、経営的に追い込まれているバス会社も全国的に散見されている現在、ことは岡山だけの問題ではなく、今後の試金石ともなるべく重要な事案なので国としてもできるだけ路線維持に向けて積極的に関わりを持つことをアピールしたとも取れます。

国が動けば地方も動く、というわけでしょうか。
2月15日、これらの路線に関係する岡山、倉敷、玉野、瀬戸内市の市長らが岡山県に対して、路線維持への協力を要請しました。

岡山市を除く3市は両備グループの小嶋光信会長とも面談し、廃止届の撤回を要請することになりました。
この会談に岡山市が加わっていないのはめぐりんを抱えるからでしょうか。
いろいろと大人の事情もあるようです。

 

ついに安倍首相動く!

2月22日、衆院予算委員会で希望の党の津村啓介氏(岡山、比例中国)の質問に答え、安倍首相は「今後の関係者の協議に国土交通省も参加させ、必要な協力をさせる」と表明しました。

めぐりんを巡る動きはついに安倍首相の言質を引き出してしまったのです。
余談ですが、2017年からこの時期、そして2018年4月の現在までいまだに安倍首相は様々な問題でお忙しく、常に頭を悩ませておられるのです。モリカケとか北とか米とかですね。

2月27日には岡山県議会において伊原木隆太知事が国や関係4市、バス事業者と対応を協議する場を設ける方針であることを表明しました。
まさに国、自治体挙げて両備グループの懐柔に乗り出したという様相です。

3月2日八晃運輸㈱は同社の公式HPに声明文を発表しました。

岡山市中心部から東へ西大寺地区まで伸びる新規路線、同社ではこれを益野線と称しています。

この益野線の開設については「市場活性化と利用者のサービス向上が目的」であると述べています。

そのうえで両備グループが赤字路線の運営を黒字路線で補てんしてやり繰りしていたことには一定の理解を示しつつ、行き過ぎた補てんは結局黒字路線の利用客に赤字路線の補てん分という余計な運賃を払わせているのではないかという問題提起もしています。

そして新規路線の開設は地域住民にとって選択の余地を広げ、市場の活性化に役立ち、結果、サービスの向上に資すると主張しています。

一方、国や自治体の接触やら圧力を受けてか3月5日、両備グループの小嶋光信代表は廃止届を提出していた31路線について「全ての路線が維持できるよう努力したい」と表明しました。

しかし、「認可は不公正な競争を生む」として認可を出した中国運輸局に対しての批判も忘れませんでした。

そしてついに3月15日、両備グループは31の赤字路線廃止届を撤回すると中国運輸局に対して届を提出したのです。

これで全ては一件落着か、と思われました。
しかし、・・・

 

老舗、両備の逆襲

3月31日に八晃運輸㈱が新路線・益野線の運行開始日を4月27日に決定したと発表したのを受けて、4月9日両備グループは中国運輸局の認可には過ちがあるとして認可取り消しを申し立てたのです。

あらかじめ中国運輸局に対して認可に係る文書の開示請求をしていた同グループは入手した書類を精査した結果
①バス停留所設置手続きの過程で近隣住民の了解を得ていなかった
②市管理道路ではない民有地に市が占用許可を出したりしたケースが東区で2件、中区で1件確認された
として認可の取り消しを要求したのです。

これには中国運輸局も慌て、「申し入れ内容を精査した上で今後の対応を検討したい」とコメントを出しました。
また、直接ミスを指摘された岡山市では市長が「食い違いもあるので精査していきたい。」と表明しました。

これによりまた混迷が深まるのかと誰しもが思っていたところに、両備グループはさらなる一手を打ってきたのです。

何と組合を巻き込んでのストライキ戦略に打って出たのです。

組合はストの理由として、西大寺線への他事業者による新規参入は自分たちの給与と雇用の安定に著しく不安を与えるものである、会社は国に対して早期の認可取り消しを働きかけるべきである、というものです。

な、なるほど。
分からないでもないですが、何か取ってつけたような御用組合的な臭いがするのは筆者だけでしょうか。

これが4月16日、会社に通告されました。
ストは4月23日、26日、27日に決行するとのことです。
この記事を書いているのは4月21日なのでまだ実行されるかどうかわかりません。

このバス路線戦争、まだまだ決着までには一波乱も二波乱もありそうな気配です。

しかし、両方の事業者も国や自治体も利用者ファーストで考えているのでしょうか。

利潤を追求するのはある意味民間企業の宿命です。
しかし、事業が公共の交通機関であることを考えれば行政の関わり方を含め、もう少し市民目線で解決の糸口を探していただきたいと思うのですがいかがでしょうか。

追記
4月23日、両備バスは西大寺線で1時間のストライキを決行しました。
午後1時から午後2時までとは言え、上下合わせて16本が運休し、約200人の市民の足が奪われました。

長年、地元で路線バスを運営し、市民にかわいがられもし、またあてにもされていた両備バスはこれで良いのでしょうか。

他社が市場に参入してきたら、顧客の迷惑を顧みず実力行使に出るという意思表示なのでしょうか。

続報はまたお知らせしたいと思います。